「100両欲しぃ〜!」 しんしんと雪が降り続く夜、舟宿の2階でいつもの熊蔵の寝言が始まった。
妙な輩に勘違いされると主人が心配していると、 木戸を叩く音が聞こえてきた。
「ドンドンドン!ここを開けろ!」
恐る恐る外を見ると、そこには武士と若い娘。 聞くと、浅草まで芝居を観に来た帰り、雪が降り始めたので深川まで舟を出して欲しいという。
「100両欲しぃ〜!」 あいにく漕ぎ手が出払っていると主人が断ると、 また熊蔵の寝言が始まった。
ばつの悪そうな主人を武士がうながすと、主人は気乗りしない様子で熊蔵に声をかけた。
「雪の中、手間をかけさせるのだ。酒手は勢むぞ!」 欲深い熊蔵は、武士の言葉を聞いて飛び起きた。
舟を漕ぎ始めると、次第に月明かりが辺りを照らし始めた。 寒空の中、酒手を待ちながら舟を漕いでいた熊蔵だが、ついに待ちきれなくなって武士に酒手をせがむと、
武士は思いがけない話を熊蔵に始めた…
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