このサイトは金原亭馬遊監修のもと、馬遊ホームページ制作委員会が運営しております。

TOP ページ  プロフィール  特別企画  これからの出演予定  これまでの演目  リンク  お仕事のご依頼・ご意見の受付


〜特別企画〜  金原亭馬遊の心に迫る

第1回 落語との出会い 小学生時代〜大学落研編

第2話

第1話に戻る    第3話に進む

馬遊師匠: 男女5、6人ずつ12、3人のメンバーの人たちが着物を着て
「札幌大学落語研究会」と書かれた幟(のぼり)を持って、
片手にカセットデッキを持ってお囃子のテープを流しながら
出てきたんですよ。

そしてそのメンバーたちが、一人一人は小噺を語っていくわけですよ。
男子部員はスタンダードな小噺、それこそ「天井から雨がもるよ、やーねー」くらいの
その程度の噺を・・・
逆に女性部員の方がちょっといやらしい小噺なんかをするわけですよ。
「キスしていいかい?またにして!」とかね。

あったかい笑いがざわざわっと講堂中にあふれたときに
あ、いいなあと思ったんですよね。

で、サークル紹介が終わった後、演劇部に入ろうか、落語研究会に
入ろうかまだ悩んでいました。
もちろん演劇部にいくのが第一希望だったんだけど、
そんなわけで落語研究会に入ろうかなという考えも頭の隅に生まれていました。

そして、暇な時間にサークル会館にいって、演劇部の部室に
話だけでも聞かせてもらおうと思って向かいました。

ところが、私の大学の演劇部はすごい人気でがありまして、1学年から4学年までで
団員が70人か80人くらいいたんですよ。
その中には、もちろん演劇をするだけじゃない衣装担当とか照明担当とか
の裏方の人たちもいるんですよね。でもその裏方の人たちも、本当は演劇がしたくて、
舞台に立ちたくて入ったんだけど、人数が多すぎて舞台に立てないんですよね。

特に、1年生、2年生のうちはみんなそういう裏方さんな訳ですよ。
3年生になってやっと舞台に立てるんですね。
そんな話を聞いたときに「え〜っ!」と思いましたね。

そのとき演劇部ではそういう話だけ聞いて、「じゃあまた伺うかもしれませんが、
その時はまたお願いします」という感じで、部室を後にしました。

で、その後落語研究会の部室に向かったんですね。

馬遊青年:トントントントン
部員:は〜い、どうぞ〜って、
馬遊青年:すみません、見学というかお話だけ聞きに来たんですがいいですか?


落語研究会の部室のドアを開けると、さっきまで、サークル紹介で
着物を着ていた人たちがそのときの格好のまま「はい、どうぞどうぞ」って
通してくれたんですね。
その後、お茶を出してくれる、せんべいを出してくれる、
「お茶が嫌なら冷蔵庫にコーラもあるよ」とかね。

別に菓子やコーラに魅かれたわけじゃないけど、落語研究会の人の話を聞いたら
すごーくアットホームな感じで、いい先輩方だなと思いました。

そして、ここが一番なんですが、演劇部に入った場合の、「2年間裏方やって、
3年生になったときに大した役がもらえるかどうかわからない」という現実に対して、
落研に入った場合の
「落語ってひとりで全部できるんだ。いろんな人物を使い分けて、例え数十分でも何役も
演じることができて、そのときは自分が主役なんだ」ことの違いを考えました。

つまり、部室で先輩から
「うちの場合は1年生から全員高座に立たせます。学園祭やいろんな行事ごとに
全員高座に上がります」という話を聞きまして、
それは考えようによっては落語って面白いなあと感じるようになったんですね。

そして、結局演劇部ではなく、落語研究会に入りました。
まあこれが、私の落語との、いや、落語というよりも落語研究会との出会いですね。

制作委員: 札幌に出てきたときの、ご自身を変えたいという思いを叶えた訳ですね。

馬遊師匠: また話が前後してしまうのですが、実は高校時代にも演劇部入ろうとしたことがあり、
やっぱり入部しなかったという経験があるんですよ。

私の通っていたの高校の演劇部って、北海道の中ではなかなかの劇をしていたんです。
それこそ優秀な賞をとったりする演劇部でした。

そして、私は高校1年生のとき、演劇部に入ろうとして部室まで行ったんですね。
その時、部室の前に2年生か3年生かわからないですが、女子部員が4、5人いて
私が近づいていったら、彼女たちが私を見て
これは私の思い込みかもしれませんが、その彼女たちが私を見るなり
「何この子、やだ、まさかうちに来ようとする?」の
みたいな目で見られた感じがしたんですよ。

そのとき私は、身長が155cmくらいで、体重が80キロくらいの超肥満児だったんですよ。
それで、体型的なコンプレックスもすごかったんですよ。

でその時は、そのまま何ごともなかったかのように、
その女子部員のいる部室の前をすーって通り過ぎまして・・・
もうそれがくやしくてくやしくて・・・
それで、心を鍛えることができないのなら、
せめて体だけでも鍛えようと思って柔道部に入ったんですよ。

制作委員: 高校時代の3年間に、柔道で鍛えることによって何キロか痩せましたか?

馬遊師匠: 痩せた痩せた!
クラスのみんながみなびっくりするくらい、痩せました。

クラスメイトが、春休み、夏休み、冬休みが明けるたびに
「お前、やせたな〜」って言うくらい痩せましたね。
3年間で20キロくらいやせたました。

普通、高校生のときの学生服のサイズって、成長期と重なるので
だんだん大きくなっていきますよね。
SからM、MからLって。でも私の場合は逆でしたね。
LからM、MからSへとサイズが変わっていきましたから。
ちょっと話が戻っちゃいました(笑

制作委員: それはすごいですね。
ではお話を落研時代に戻させていただきます。
落研に入られて、必然的に落語に出会うようになる訳ですけどれも、
初めて生で落語を聴いたのはいつですか?

馬遊師匠: 札幌って大きな街なので、当時もプロの人が来て落語会をするというのは
結構ありました。

大学の落研に入っていると、ある程度そういう落語会のアルバイトがあるわけですよ。
それは、落語会のモギリとか受付けとかの仕事をする代わりに
タダでその落語会の落語を聞けるというアルバイトです。

当時札幌の大学のなかで、落語研究会があった大学って5つくらいしかありませんでした。
ですので、必然的に落語会があるとよく声がかかる訳ですよ、
モギリやとか会場整理とか・・

落研に入って、すぐある落語会の手伝いに行きました。
それが初めて生で落語を聴いたときで、そのときのことをはっきり今でも覚えています。

朝日新聞の札幌支社のビルの中に、朝日ホールというホールがあって、
当時そこで定期的に「朝日ホール名人会」という落語会が開催されていました。

そこで会場の手伝いをする代わりに、タダで落語を聴きました。
それが初めて生で落語を聞いた時でした。

1985年ですから、今からもう22年前のことになりますね。
「華の二ツ目五人集」という落語会でした。

制作委員: どなたの落語を聞いたか覚えていますか?
馬遊師匠: 今でも覚えてる!
生の落語ってすごいなあって、
今でも覚えます!

5人出演していましてね、
オープニングが現在のいなせ家半七師匠(当時:春風亭茶々丸)で
新作だったので演目はわかりませんが、都会が舞台の若い男女の恋物語でした。

2人目が
柳亭市馬師匠(当時柳家さん好)
ネタは「尻もち」。
うまかったねぇ〜。

3番目にでてきたのが
今の私の兄弟子でもある、初音家左橋師匠(当時金原亭小駒)
ネタは「権助魚」。

そこで中入りがあって、くいつきが
林家しん平師匠、ネタは「豆や」。
もちろん、漫談を20分ふり倒して、爆笑させて、本題の「豆や」は5分でしたが(笑

トリは当時二ツ目でしたが、真打昇進が間近の
春風亭正朝師匠、ネタは「蛙茶番」
おもしろかった〜〜〜。

若手でしかも勢いのある5人でしたから、衝撃の一言でした。
生の落語ってすごいってね。

これが初めて生で聴いた落語でした。

制作委員: その後も落語会にはよく行かれましたか?
馬遊師匠: ええ、行きました。 札幌には、日本テレビ系列で札幌放送という放送局があり、
放送局のビルの中に「STVホール」というホールがありまして
毎月「STVホール落語会」という落語会が開催されていました。
そこで収録した落語をラジオで放送していたんですね。

私の師匠の伯楽もよく来ていましたから、聴きましたね。
当時、志ん朝師匠などもよく来ていて、見ましたよ。
他にもいろんな落語家さんを見ましたよ。

落語を初めて生で見て衝撃を受けたのが、先ほど話した「朝日ホール名人会」で
その後は、この「STVホール落語会」でよく落語を聞きましたね。
どちらも、東京で言う「にっかん飛切落語会」や、「東京落語会」みたいなもんですね。
しかし、今はどっちの落語会もなくなってしまったみたいで、もったいないですね。

制作委員: 当時、お気に入りの落語家さんはいらっしゃいましたか?
馬遊師匠: なんと言っても、当時日本全国の落研の学生さんが憧れたのは、
春風亭小朝師匠でしょうね。当時の小朝師匠は30歳くらいでしたでしょうか。
おもしろかったし、口調がわかりやすくてね。もちろん、当時の素人の感覚ですけど。

落研の女子部員なんかは、まず小朝師匠の落語をやっていましたね。
小朝師匠の落語は、男の部員にももちろんなんですが、特に女性に受けるんですよね、
やさしい語り口調でね。
男の部員は、ひねくれているわけじゃないんだけど、やっぱり
志ん朝師匠や小三治師匠に行くんですよね。

私はやっぱり、志ん朝師匠に憧れましたよ。まさか落語の世界に入って、
志ん朝師匠と同じ一門に入れるとは思わなかったですよ。

落語家になって、初めて楽屋で志ん朝師匠に会ったとき、前座だから
師匠にお茶を出すわけなんだけど、緊張しちゃって手が震えちゃって、
湯呑が振るえるから、お茶が茶卓にこぼれちゃってね・・・
そういうことを覚えてますよ。

制作委員: 怒られたりとかしませんでしたか?

馬遊師匠: いやいや全然怒られなかったですよ。
「しっかりやんなっ」って声をかけていただきました。

制作委員: 志ん朝師匠とのお話などは、後日お話を伺う「入門〜前座編、二ツ目編」で
いろいろ思い出を語っていただけそうですね。 (第3話へ続く)

第1話に戻る    第3話に進む

TOP